「熱」の用語集
EJU物理の熱分野における用語を分野別にまとめた一覧ページ
熱と温度
【温度(おんど)】
定義
温度は、物体のあたたかさや冷たさの程度を表す量です。物理では、物体をつくる粒子の熱的な運動の激しさを表す量として考えます。ただし、温度は1個1個の粒子ではなく、物体全体の状態を表す量です。
イメージ
物体の中の粒子は、いつも不規則に動いています。温度が高いと、その動きがより激しくなります。逆に温度が低いと、粒子の動きは弱くなります。つまり、温度は「中の粒子がどのくらい活発に動いているか」の目安と考えると理解しやすいです。
数式
温度そのものを表す基本的な記号として、\(T\) を使います。単位には \(K\)(ケルビン)や \(^\circ\mathrm{C}\) が使われます。
絶対温度 \(T\) と摂氏温度 \(t\) [\(^\circ\mathrm{C}\)]の間には、次の関係があります。
\[T = t + 273\]
ポイント
- 温度は、物体全体の熱的な状態を表す量であり、熱そのものではない
- 温度が高いほど、粒子の熱運動は一般に激しくなる
- 計算では、特に気体の式で \(^\circ\mathrm{C}\) ではなく \(K\) を使うことが多い
【絶対温度(ぜったいおんど)】
定義
絶対温度とは、物体を構成する粒子の熱運動の大きさを表す温度であり、理論上これ以上下がらない基準(絶対零度)を 0 とした温度である。
イメージ
温度は「どれだけ粒子が動いているか」を表している。絶対温度では、粒子の運動が完全に止まる状態を 0 とする。つまり、数値が大きいほど粒子は激しく動いていると考えられる。
数式
\[T = t + 273\]
\(T\):絶対温度(K)
\(t\):摂氏温度(℃)
ポイント
- 絶対温度の単位はケルビン(K)であり、℃は使わない
- 0 K は絶対零度であり、これより低い温度は通常の物理では考えない
- 気体の状態方程式などでは必ず絶対温度を使う
【熱量(ねつりょう)】
定義
熱量とは、物体が他の物体と熱のやりとりをするときに移動するエネルギーの量である。温度差があるときに、高温の物体から低温の物体へ移動する。
イメージ
あたたかい物体と冷たい物体を接触させると、あたたかい側のエネルギーが冷たい側へ移る。この「移っていくエネルギーの量」が熱量である。お湯に氷を入れると氷が溶けるのは、お湯から氷へ熱量が移動しているためである。
数式
熱量 \(Q\) は、物体の質量 \(m\)、比熱 \(c\)、温度変化 \(\Delta T\) によって
\[Q = mc\Delta T\]
で表される。
ここで、\(m\) は質量、\(c\) は比熱、\(\Delta T\) は温度の変化である。
ポイント
- 熱量は「物体が持っている量」ではなく「移動するエネルギー」である
- 温度が同じでも、質量や比熱が違えば必要な熱量は異なる
- 熱量の単位はジュール(J)で表される
【熱容量(ねつようりょう)】
定義
ある物体の温度を1 K(または1 ℃)だけ上げるために必要な熱量を表す量。
イメージ
大きな鍋の水と、小さなコップの水では、同じ温度上昇でも必要な熱の量が違う。この「物体全体としてどれくらい熱をためこむか」を表すのが熱容量である。
数式
\[Q = C\Delta T\]
\(Q\):加えた熱量(J)
\(C\):熱容量(J/K)
\(ΔT\):温度変化(K または ℃)
ポイント
- 熱容量は物体全体の性質で、質量が大きいほど大きくなる
- 比熱 c と質量 m を使って \(C = mc\) と表せる
- 比熱は物質の性質、熱容量は物体の大きさを含む量
【比熱(ひねつ)】
定義
物質1 kgの温度を1 K(または1 ℃)だけ上げるために必要な熱量を表す量。
イメージ
同じ熱量を加えても、水はゆっくり温まり、金属はすぐに温まる。この違いを表すのが比熱である。
数式
\[Q = mc\Delta T\]
\(Q\):熱量(J)
\(m\):質量(kg)
\(c\):比熱(J/(kg・K))
\(ΔT\):温度変化(K または ℃)
ポイント
- 比熱が大きいほど、同じ熱量でも温度変化は小さい
- 物質ごとに値が決まっており、状態(固体・液体など)でも変わる
- 水の比熱は特に大きく、約4.2×10³ J/(kg・K)である
【熱平衡(ねつへいこう)】
定義
温度の異なる物体同士を接触させたとき、時間がたつと互いの温度が等しくなり、それ以上変化しなくなる状態。
イメージ
熱い物体と冷たい物体をくっつけると、熱は高温から低温へ移動する。やがて両方とも同じ温度になり、熱の移動が止まる。この状態が熱平衡である。
数式
\[T_1 = T_2\]
\(T₁、T₂\):それぞれの物体の温度(K または ℃)
ポイント
- 熱は温度が高い方から低い方へ移動する
- 温度が等しくなると、見かけ上は熱の移動が止まる
- 熱平衡では「温度」が等しいことが本質であり、熱量が等しいわけではない
【熱量保存(ねつりょうほぞん)】
定義
外部との熱の出入りがないとき、系の中で高温の物体が失った熱量と、低温の物体が受け取った熱量がつり合うという関係をいう。
これはエネルギー保存の一部として現れる現象であり、特に熱のやりとりに注目した場合の表現である。
イメージ
熱い金属と冷たい水を混ぜると、金属は冷え、水は温まる。
このとき、金属が失った分だけ水が熱を受け取っているため、全体としての熱のやりとりはつり合っている。
つまり、「片方が失った分は、もう片方が受け取っている」と考えると理解しやすい。
計算では、この関係を整理したものとして「熱収支(全体で熱の和が0)」として扱う。
数式
熱量保存の関係は、次のように表される。
\[Q_{\text{失}} + Q_{\text{得}} = 0\]
または、具体的には
\[m_1 c_1 (T - T_1) + m_2 c_2 (T - T_2) = 0\]
\(m\):質量(kg)
\(c\):比熱(J/(kg・K))
\(T_1、T_2\):初めの温度(K または ℃)
\(T\):最終的な共通の温度(K または ℃)
この式は、全体の熱のやりとりを符号付きで整理した「熱収支」と同じ意味をもつ。
ポイント
- 熱量保存は「断熱(外部との熱の出入りなし)」が前提になる
- 実際にはエネルギーが保存されており、熱だけが単独で保存されるわけではない
- 計算では「熱収支(ΣQ=0)」として式を立てると整理しやすい
状態変化
【三態(さんたい)】
定義
物質がとる基本的な状態である「固体・液体・気体」の3つの状態をまとめたもの。
イメージ
氷(固体)は形が固定されている、水(液体)は容器に合わせて形が変わる、水蒸気(気体)は空間いっぱいに広がる。このように、同じ物質でも状態によって性質が大きく変わる。
数式
\[\text{固体} \leftrightarrow \text{液体} \leftrightarrow \text{気体}\]
温度や圧力の変化によって状態が変化する。
ポイント
- 三態は粒子の動き方と間隔の違いで説明できる
- 固体は粒子がほぼ固定、液体は動けるが近い、気体は自由に運動する
- 状態変化(融解・蒸発など)は温度や圧力の変化で起こる
【融解(ゆうかい)】
定義
固体が熱を受け取って液体に変化する現象であり、温度が一定のまま状態だけが変化する。
イメージ
例えば氷に熱を与えると、0 ℃のまま氷がだんだん水に変わる。温度は上がらないが、内部では分子の結びつきが弱まり、固体から液体へ変化している。
数式
\[Q = mL\]
\(Q\):吸収した熱量(J)
\(m\):質量(kg)
\(L\):融解熱(J/kg)
ポイント
- 融解中は熱を加えても温度は上昇しない
- 融解熱は状態変化に必要なエネルギーであり、温度変化には使われない
- 温度変化の式 \(Q = mc\Delta T\) と混同しないこと
【蒸発(じょうはつ)】
定義
液体の表面から分子が飛び出して気体になる現象。
イメージ
水たまりが時間とともに消えていくのは、表面の分子が少しずつ空気中へ飛び出しているためである。温度が低くても起こるのが特徴である。
数式
\[Q = mL\]
\(Q\):吸収した熱量(J)
\(m\):質量(kg)
\(L\):蒸発熱(J/kg)
ポイント
- 蒸発は液体の「表面」で起こる現象
- 沸騰と違い、どの温度でも起こる
- 蒸発するとき、周囲から熱を奪うため温度が下がる(気化熱)
【潜熱(せんねつ)】
定義
物質が状態変化(固体⇄液体、液体⇄気体)するとき、温度を変えずに吸収または放出する熱量。
イメージ
氷が水になるときや、水が蒸発するときは、熱を加えても温度は変わらない。このときの熱は温度を上げるためではなく、状態を変えるために使われている。これが潜熱である。
数式
\[Q = mL\]
\(Q\):熱量(J)
\(m\):質量(kg)
\(L\):潜熱(J/kg)
※ 融解では融解熱、蒸発では蒸発熱として扱う
ポイント
- 潜熱は温度変化を伴わない熱である
- 状態変化の種類によって、融解熱・蒸発熱などに分かれる
- 温度変化の式 \(Q = mc\Delta T\) とは別に考える必要がある
【融解熱(ゆうかいねつ)】
定義
物質1 kgを、温度を変えずに固体から液体に変えるために必要な熱量。
イメージ
氷を0 ℃で温めると、温度は変わらずに水へと変わっていく。このとき使われている熱が融解熱であり、温度を上げるのではなく、状態を変えるために使われている。
数式
\[Q = mL\]
\(Q\):吸収した熱量(J)
\(m\):質量(kg)
\(L\):融解熱(J/kg)
ポイント
- 融解熱は「1 kgあたり」に必要な熱量として定義される
- 融解中は温度が一定で、熱は状態変化に使われる
- 凝固では同じ大きさの熱が放出される
【蒸発熱(じょうはつねつ)】
定義
液体が気体に変化するために必要な熱量(単位質量あたり)を表す量。
イメージ
水が蒸発するとき、表面の水分子が空気中へ飛び出していく。このとき、周囲から熱を受け取るため、水や周囲の温度が下がることがある。
数式
\[Q = mL\]
\(Q\):吸収した熱量(J)
\(m\):質量(kg)
\(L\):蒸発熱(J/kg)
ポイント
- 蒸発は表面で起こり、沸騰とは異なる現象である
- 蒸発には熱が必要で、その分だけ周囲の温度が下がることがある
- 温度変化の式 \(Q = mc\Delta T\) とは別に扱う必要がある
【熱膨張(ねつぼうちょう)】
定義
物質が温度変化によって体積や長さを変える現象。
イメージ
金属の棒を温めると少し長くなり、冷やすと元に戻る。つまり、温度が上がると物質の内部の粒子の動きが大きくなり、全体として広がる。
数式
\[\Delta L = \alpha L_0 \Delta T\]
\(ΔL\):長さの変化(m)
\(L₀\):もとの長さ(m)
\(α\):線膨張係数(1/K)
\(ΔT\):温度変化(K)
ポイント
- 温度が上がると膨張し、下がると収縮する
- 固体・液体・気体すべてで起こるが、気体で特に大きい
- 問題では長さ変化(線膨張)として扱うことが多い
熱力学
【内部エネルギー(ないぶえねるぎー)】
定義
物質の中にある分子の運動や相互作用によってもつエネルギーの総和。
イメージ
気体の中では、分子が高速で動いたり衝突したりしている。このような見えない運動や、分子同士の引き合い・反発によるエネルギーが内部エネルギーである。
数式
\[\Delta U = Q - W\]
\(ΔU\):内部エネルギーの変化(J)
\(Q\):加えた熱量(J)
\(W\):外部にした仕事(J)
ポイント
- 内部エネルギーは物質全体の状態で決まり、位置や運動のエネルギーとは区別する
- 熱を加えると増え、外に仕事をすると減る
- 理想気体では温度だけで決まる
【熱と仕事(ねつとしごと)】
定義
熱と仕事はどちらもエネルギーの移動の形であり、互いに変換することができる。
イメージ
ガスを押し縮めると温度が上がる。これは外から仕事を加えることで、内部エネルギーが増えている。また、ガスを膨張させると外に仕事をして温度が下がる。つまり、熱と仕事はエネルギーのやりとりの別の形である。
数式
\[\Delta U = Q + W\]
\(ΔU\):内部エネルギーの変化(J)
\(Q\):加えた熱量(J)
\(W\):外部からされた仕事(J)
ポイント
- 熱と仕事はどちらもエネルギーの移動であり、本質的に同じものとして扱う
- 符号の取り方に注意が必要で、外からされた仕事を正とする
- 熱と仕事の関係は内部エネルギーの変化としてまとめて考える
【熱力学第1法則(ねつりきがくだいいちほうそく)】
定義
物体に加えた熱と、物体がした仕事は、物体の内部エネルギーの変化として現れるという法則。
イメージ
気体に熱を加えると、温度が上がるだけでなく、外に向かって膨らんで仕事をする。このとき、与えた熱は「内部エネルギーの増加」と「外にした仕事」に分かれている。
数式
\[Q = \Delta U + W\]
\(Q\):加えた熱量(J)
\(ΔU\):内部エネルギーの変化(J)
\(W\):外部にした仕事(J)
ポイント
- 加えた熱はすべて温度上昇に使われるとは限らず、仕事にも使われる
- Wは「外にした仕事」を正とするのが基本で、符号の取り方に注意が必要
- 熱量保存と似ているが、「仕事」というエネルギーの出入りも含めて考える点が重要
【熱機関(ねつきかん)】
定義
高温の熱源から熱を受け取り、その一部を仕事に変え、残りを低温の熱源へ捨てる装置。
イメージ
火力発電や自動車のエンジンでは、燃料を燃やして高温の状態をつくり、その熱で機械を動かす。ただし、受け取った熱をすべて仕事に変えることはできず、一部は必ず外へ逃げる。
数式
\[W = Q_1 - Q_2\]
\[\eta = \frac{W}{Q_1}\]
\(W\):取り出した仕事(J)
\(Q₁\):高温熱源から受け取る熱量(J)
\(Q₂\):低温熱源へ捨てる熱量(J)
\(η\):熱効率
ポイント
- すべての熱を仕事に変えることはできず、必ず損失が生じる
- 効率は高温と低温の差が大きいほど高くなる
- 熱機関は必ず「高温源→低温源」への熱の流れを伴う
【熱効率(ねつこうりつ)】
定義
熱機関が受け取った熱エネルギーのうち、仕事として取り出すことができた割合。
イメージ
例えばエンジンでは、燃料の熱エネルギーのすべてが動力になるわけではない。一部は排気や周囲に逃げてしまう。つまり、入れた熱のうちどれだけ有効に使えたかを表すのが熱効率である。
数式
\[\eta = \frac{W}{Q_{\text{in}}}\]
\(η\):熱効率(無次元)
\(W\):取り出した仕事(J)
\(Q_{\text{in}}\):吸収した熱量(J)
または
\[\eta = 1 - \frac{Q_{\text{out}}}{Q_{\text{in}}}\]
\(Q_{\text{out}}\):外へ捨てた熱量(J)
ポイント
- 熱効率は必ず1未満になり、100%になることはない
- 吸収した熱の一部は必ず外へ放出される
- 高温と低温の差が大きいほど効率は高くなる傾向がある
【熱力学第2法則(ねつりきがくだいにほうそく)】
定義
自然に起こる熱の移動や変化の向きを定める法則であり、熱は高温から低温へ自発的に移動し、逆向きにはそのままでは進まないという性質を表す。
イメージ
熱いコーヒーは放っておくと冷めるが、冷たい水が自然に熱くなることはない。つまり、自然な変化には「一方向性」があり、元の状態に勝手には戻らない。
また、混ざったものが自然に分かれて元に戻ることがないのも同じ性質である。
数式
\[\Delta S \ge 0\]
\(ΔS\):エントロピーの変化(J/K)
孤立系では、エントロピーは減少せず、一定または増加する。
ポイント
- 熱は自然には高温から低温へしか移動しない
- 完全に元に戻る変化(可逆変化)は理想的な場合のみで、現実では不可逆変化が起こる
- エントロピーは「乱雑さ」の指標であり、自然な変化では増加する方向に進む
【不可逆変化(ふかぎゃくへんか)】
定義
一度起こると、自然には元の状態に戻らない変化。
イメージ
例えば、熱いコーヒーを机の上に置くと、時間がたつにつれて冷めていく。このとき、周囲に熱が広がってしまい、自然には元の熱い状態には戻らない。
数式
\[\Delta S > 0\]
\(ΔS\):エントロピーの変化(J/K)
ポイント
- 実際の自然現象の多くは不可逆変化である
- エントロピーが増大する方向にのみ進む
- 可逆変化は理想的な極限であり、現実にはほぼ存在しない
気体
【ボイルの法則(ぼいるのほうそく)】
定義
温度が一定のとき、気体の圧力と体積は反比例の関係になるという法則。
イメージ
ピストンで気体を押し縮めると体積は小さくなり、その分だけ圧力は大きくなる。逆に、体積を広げると圧力は小さくなる。
数式
\[pV = \text{一定}\]
または
\[p_1 V_1 = p_2 V_2\]
\(p\):圧力(Pa)
\(V\):体積(m³)
ポイント
- 温度が一定であることが成立条件(等温変化)
- 圧力と体積は反比例の関係になる
- 状態が変化しても \(pV\) の値は変わらない
【シャルルの法則(しゃるるのほうそく)】
定義
気体の圧力が一定のとき、体積は絶対温度に比例して変化するという法則。
イメージ
密閉されたピストン付き容器の中の気体を考える。温度を上げると分子の動きが激しくなり、ピストンを押し上げて体積が大きくなる。逆に温度を下げると体積は小さくなる。 つまり、圧力を変えない条件では、温度の上昇に合わせて気体はふくらみ、温度の低下に合わせて縮む。温度と体積は、絶対温度を使うと比例関係で表される。
数式
\[V \propto T\]
\[\frac{V}{T} = \mathrm{const.}\]
\[\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\]
\(V\):体積(m³)
\(T\):絶対温度(\(K\))
\(V_1\)、\(V_2\):変化前後の体積(m³)
\(T_1\)、\(T_2\):変化前後の絶対温度(\(K\))
ポイント
- 温度は必ず絶対温度で扱う。℃のままでは比例関係にならない
- 圧力が一定であることが条件であり、この条件がくずれるとそのまま使えない
- ボイルの法則とあわせて考えると、気体の状態変化を整理しやすい
【ボイル・シャルルの法則(ぼいるしゃるるのほうそく)】
定義
気体の圧力・体積・温度の関係をまとめた法則で、温度一定では圧力と体積が反比例し、圧力一定では体積と温度が比例するという関係。
イメージ
気体を押し縮めると体積は小さくなり、その分圧力は大きくなる。また、気体を温めると分子の動きが激しくなり、体積が大きくなる。これら2つの性質を同時にまとめたのがこの法則である。
数式
\[PV = \text{一定}\]
\(P\):圧力(Pa)
\(V\):体積(m³)
\[\frac{V}{T} = \text{一定}\]
\(V\):体積(m³)
\(T\):絶対温度(K)
\[\frac{PV}{T} = \text{一定}\]
\(P\):圧力(Pa)
\(V\):体積(m³)
\(T\):絶対温度(K)
ポイント
- 温度は必ず絶対温度で扱う必要がある
- ボイルの法則(温度一定)とシャルルの法則(圧力一定)を組み合わせた形
- 状態変化では「どの量が一定か」を見極めて式を使い分けることが重要
【状態方程式(じょうたいほうていしき)】
定義
気体の圧力・体積・温度・物質量の関係を表す式。
イメージ
気体は、押し縮めると体積が小さくなり、温めると膨らむ。このように、圧力・体積・温度は互いに関係しており、その関係を一つの式でまとめたものが状態方程式である。
数式
\[PV = nRT\]
\(P\):圧力(Pa)
\(V\):体積(m³)
\(n\):物質量(mol)
\(R\):気体定数(J/(mol・K))
\(T\):絶対温度(K)
また、物質量 \(n\) を質量 \(m\) とモル質量 \(M\) で表すと
\[PV = \frac{m}{M}RT\]
\(m\):質量(kg)
\(M\):モル質量(kg/mol)
ポイント
- 温度は必ず絶対温度で扱う(℃のままでは使えない)
- この式は理想気体に対して成り立つ近似である
- 圧力・体積・温度の3つの関係(ボイル・シャルルの法則)をまとめた形になっている
【分子運動論(ぶんしうんどうろん)】
定義
物質は多数の分子からできており、それらが絶えず運動していると考えて、気体や熱の性質を説明する理論。
イメージ
空気の中の分子は見えないが、実際には高速で飛び回り、容器の壁に何度もぶつかっている。この衝突が集まって圧力となり、分子の運動の激しさが温度として現れる。
数式
\[pV = NkT\]
\(p\):圧力(Pa)
\(V\):体積(m³)
\(N\):分子の数
\(k\):ボルツマン定数
\(T\):絶対温度(K)
また、
\[\frac{3}{2}kT = \frac{1}{2}mv^2\]
\(m\):分子1個の質量(kg)
\(v\):分子の速さ
ポイント
- 温度は「分子の運動エネルギーの大きさ」を表している
- 圧力は分子が壁に衝突することで生じる
- 巨視的な法則(気体の状態方程式)を、微視的な分子運動で説明する理論である
【圧力(あつりょく)】
定義
単位面積あたりに垂直に働く力の大きさを表す量。
イメージ
同じ力でも、接触する面積が小さいほど強く押される。例えば、細い針は小さな面積に力が集中するため、簡単に刺さる。これは圧力が大きくなるためである。
数式
\[P = \frac{F}{S}\]
\(P\):圧力(Pa)
\(F\):面に垂直に働く力(N)
\(S\):面積(m²)
ポイント
- 同じ力でも、面積が小さいほど圧力は大きくなる
- 圧力は必ず面に垂直な成分の力で考える
- 液体や気体では、圧力はあらゆる方向に等しく伝わる
【定積変化(ていせきへんか)】
定義
体積を一定に保ったまま、温度や圧力が変化する気体の状態変化。
イメージ
ふたをしっかり閉めた容器の中の気体を温めると、気体は外に広がれない。そのため体積は変わらず、圧力だけが大きくなる。
数式
\[\frac{P}{T} = \text{一定}\]
または
\[\frac{P_1}{T_1} = \frac{P_2}{T_2}\]
\(P\):圧力(Pa)
\(T\):絶対温度(K)
ポイント
- 体積が一定なので、気体は外部に仕事をしない
- 温度は必ず絶対温度で扱う必要がある
- 圧力と温度は比例関係になる(グラフは直線)
【定圧変化(ていあつへんか)】
定義
気体の圧力を一定に保ったまま、体積と温度が変化する状態変化。
イメージ
気体を入れた容器の上に、なめらかに動くピストンがあり、その上に一定の重さのおもりが乗っている場面を考える。このとき外からかかる圧力は変わらないので、気体を温めるとピストンが上がって体積が大きくなり、冷やすとピストンが下がって体積が小さくなる。つまり、圧力はそのままで、体積と温度だけが一緒に変わる。
別の見方をすると、気体がふくらむためには外側を押し返す必要がある。定圧変化では、その押し返す相手の強さがずっと同じなので、温度が上がれば、その分だけ気体はより大きな体積をとることができる。
数式
\[\frac{V}{T} = \text{一定}\]
または
\[\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}\]
\(V\):体積(m³)
\(T\):絶対温度(K)
\(V₁、V₂\):変化の前後の体積(m³)
\(T₁、T₂\):変化の前後の絶対温度(K)
この関係は、圧力と気体の量が一定のときに成り立つ。温度をセルシウス温度でそのまま使うと比例関係が崩れるので、必ず絶対温度で考える。
ポイント
- 圧力が一定でも、体積と温度は変化してよい
- 比例関係はセルシウス温度ではなく、絶対温度で成り立つ
- ピストン問題では、外圧が一定であることから定圧変化と判断することが多い
【等温変化(とうおんへんか)】
定義
気体の温度を一定に保ったまま、圧力と体積が変化する状態変化。
イメージ
ピストン付きの容器で、ゆっくりと体積を変化させると、外部と熱のやりとりをしながら温度が一定に保たれる。圧縮すると体積は小さくなり圧力は大きくなり、膨張すると体積は大きくなり圧力は小さくなる。
数式
\[PV = \text{一定}\]
または
\[P_1 V_1 = P_2 V_2\]
\(P\):圧力(Pa)
\(V\):体積(m³)
ポイント
- 温度が一定のとき、圧力と体積は反比例の関係になる
- 温度一定を保つためには、外部との熱の出入りが必要になる
- 圧縮では外へ熱を放出し、膨張では外から熱を吸収する
【断熱変化(だんねつへんか)】
定義
気体が変化するとき、外部との間で熱の出入りがない状態変化。
イメージ
断熱材で囲まれた容器の中の気体を、すばやく圧縮したり膨張させたりする場面を考える。外から熱が入ったり外へ逃げたりする時間がほとんどないとき、気体は熱のやりとりをしないまま状態を変える。つまり、気体を圧縮すると温度は上がり、膨張すると温度は下がる。
身近な例では、自転車の空気入れをすばやく押すと空気が熱くなりやすい。これは圧縮の仕事が気体の内部エネルギーの増加につながるためである。反対に、気体が外へ向かって広がると、自分で仕事をする分だけ内部エネルギーが減り、温度が下がることがある。
数式
\[Q = 0\]
したがって、熱力学第一法則
\[Q = \Delta U + W\]
より
\[\Delta U = -W\]
また、理想気体の断熱変化では
\[pV^\gamma = \text{一定}\]
が成り立つ。
\(Q\):気体が受け取る熱量(J)
\(\Delta U\):内部エネルギーの変化(J)
\(W\):気体が外部にする仕事(J)
\(p\):圧力(Pa)
\(V\):体積(m³)
\(\gamma\):比熱比(無次元)
ポイント
- 断熱変化では熱の出入りがないので、温度変化は仕事によって起こる
- 圧縮では気体の温度が上がり、膨張では温度が下がることが多い
- 「断熱」は「温度一定」ではない。温度一定なのは等温変化であり、ここを混同しやすい
【モル比熱(もるひねつ)】
定義
物質1 molの温度を1 Kだけ上げるために必要な熱量を表す量。
イメージ
同じ気体でも「1 mol」という粒の数でそろえて考えると、どれだけ温まりやすいかを比較できる。つまり、物質の量をmolでそろえたときの「温まりにくさ」を表している。
数式
\[Q = nC\Delta T\]
\(Q\):加えた熱量(J)
\(n\):物質量(mol)
\(C\):モル比熱(J/(mol・K))
\(ΔT\):温度変化(K)
さらに、気体では条件によって値が異なる:
\[C_p - C_v = R\]
\(Cₚ\):定圧モル比熱(J/(mol・K))
\(Cᵥ\):定積モル比熱(J/(mol・K))
\(R\):気体定数(J/(mol・K))
ポイント
- 質量ではなく「mol」で考える比熱である
- 定圧と定積で値が異なる点が重要
- 理想気体では \(Cₚ\) と \(Cᵥ\) の差は一定(\(R\))になる